市場性を意識する

 ちきりんさんの『マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』を再読した。発売して間もない頃に買って一度ざっと読んでいたのだが、内容をすっかり忘れてしまっていて、なんだかまた読みたい気がしたのだ。

 

 

市場化する社会

 

 この本では、かつて相対取引だったものがどんどん市場取引型になっていると説明している。

 

 相対取引とは「自分で取引相手を探し、個別に条件交渉をして取引する方法」である。

 例えば米を作っている農家が、屋敷を一軒一軒回って「お米はいりませんか?」と売って歩くとすれば、それは相対取引である。

 一方で、市場型の取引とは、米を売りたい人と買いたい人が一か所に集まって売り買いすることである。その集まる場所が「市場」と呼ばれる。

 

 現代の僕らにとって、米のような食料品が市場型で取引されるのは当たり前である。

 

 一方で、就職活動はどうか。

 かつては、就職活動といえば、学校の先生が良いところを紹介してくれるとか、親戚がやっている店を手伝うとか、そういった「人づて」で決まることが多かったようだ。卒業を控えた学生、つまり求職者が、就職口を個別に探してまわるのが、相対取引である。

 一方で、今ではリクナビを始めとした各種就職サイトに就活を控えた学生が登録し、企業も求人情報を登録する。労働力を売りたい人と買いたい人が「リクナビ」という一か所に集まって売り買いするので、市場型なのである。

 クラウドソーシングのサイトはもっと極端で、労働力の売り買いが小さな作業単位にまで分割されてやりとりされている。

 結婚だって、昔はお見合いだったのが、今では婚活サイトや街コンのような「市場」に集まって行われるようになってきている。世の中がどんどん市場化しているのである。

 

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気になったページの隅を折っていったら結構なことになった。



 

マーケット感覚を身につける

 

 こうした、市場化がどんどん進む世の中で、うまく稼いで行くにはどうしたら良いか。

 ちきりんさんは、なによりも「マーケット感覚」を身につけるべきだ、と説き、マーケット感覚を身につけるための具体的な方法を5つ挙げている。

 その中でも特に「失敗と成功の関係を理解する」と「市場性の高い環境に身を置く」が印象的だった。

 

 僕たちは、何かに挑戦するときに「成功する確率が40%で、失敗する確率が60%」というように、「挑戦」から「成功」「失敗」の2つに道が枝分かれしているように考える。

 ちきりんさんは、その認識がそもそも間違っていると言う。

 実際には、「失敗」は「成功」のために避けて通れないステップであり、「挑戦」→「失敗」→(失敗から学ぶ)→「挑戦」→「失敗」→(失敗から学ぶ)→……と繰り返していくうちに、いつか「成功」にたどり着くのが正しい過程である、とのことだ。

 実際、シリコンバレーのスタートアップで働く人たちにとっては、「成功のためには失敗が必須のステップ」であるという認識を当たり前に持っている。なので、失敗したことがない人は「あなたはそもそも何も挑戦してないんだね」とみなして、まったく評価しないそうだ。

 

 だから、どんどんと挑戦して、どんどんと失敗し、そこから学んで行こう、という意識を持つことが大切なのである。

 

「市場」で失敗してみよう

 

 では、どのように挑戦するのか。その鍵となるのが「市場性の高い環境に身を置く」である。

 

 市場性が高いとは何か。

 例えば、Facebookとブログを比較してみよう。僕がリアルな知人に向けてFacebook上で発言するのは、ブログを書くことに比べて市場性が低い行動である。

 Facebookで僕の発言を読む人は僕のことをよく知っている人たちばかりだから、「いいね!」を押す可能性は結構高い。

 

 一方で、ブログは不特定多数の人(いわば、マーケットのような場所)に向けて自分の文章を発信する行動である。

 ここで評価されるときには、取り上げるテーマ、文章の良し悪しや構成、写真や図表の按配など、ブログとしての価値が決め手になる。リアルな僕の存在は原則として無視されるし、他のブログの方がずっと面白い(価値がある)となれば、僕の文章はそもそも読まれもしない。

 

 このように、市場としてのメカニズムができるだけ強く働く環境で、なにかを試してみる。

 そして、失敗し、その失敗から学ぶ。改善し、再び試す。また失敗して学ぶ。

 

 こうして市場で評価される方法を経験的に学んで行くことが、マーケット感覚を身につけ、市場化する世の中でうまく生き延びて行く方法なのである。